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Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

Interview 2026.07.03

都心と少し距離を置くことで、東京は深く味わえる。小島慶子さんが語る、ヒルトン東京お台場で過ごす意味

執筆:滝田勝紀
撮影:下城英悟
メイクアップ:藤原羊二
宣材写真:河内彩

東京は、世界でも稀なほど濃密な都市です。人、光、情報、食、歴史、文化。そのすべてが高い密度で重なり合い、訪れる人を圧倒します。けれど、その渦中にいるだけでは、この街の輪郭や奥行きは、かえって見えにくいのかもしれません。10年以上にわたり日豪を往復して海外での子育てを経験した小島慶子さんは、外に出たからこそ、日本や東京の見え方が変わったと語ります。都心と少し距離を置くことで、東京はどう見えてくるのか。小島さんの言葉から、ヒルトン東京お台場に滞在する意味をひも解きます。

(プロフィール) 小島慶子(こじま・けいこ) エッセイスト、メディアパーソナリティ。1972年、オーストラリア生まれ。幼少期にシンガポールと香港にも居住。TBSアナウンサーとして活動後、2010年に独立。ラジオ、テレビ、執筆、講演など幅広い分野で活動している。家族でオーストラリアに移住し、子育てをしながら日豪を行き来する生活を経験。現在は日本を拠点に、ジェンダー、家族、教育、社会、多文化共生などをテーマに発信を続けている。

外から見たことで、日本の価値に気づいた

2014年に教育目的でオーストラリアに家族(夫と長男・次男)の拠点を移し、自身は仕事のある日本と家族の暮らすオーストラリアを往復する生活をしていた小島さんが、まず驚いたのは、日本の食や文化が、想像以上に現地の日常へ溶け込んでいたことでした。

「日本ではサンドイッチってお馴染みですよね。全国どこでも売っていて、自分で作ることもありますし、特別な“外国の料理”と意識することはない。それと同じぐらい身近な存在として、オーストラリアでは太巻きが浸透しているんです」

駅の売店やショッピングモール、小学校の学食にも太巻きがあり、タスマニアサーモンを使った寿司も身近にある。スーパーマーケットには醤油やみりん、からしといった調味料も並び、抹茶や緑茶、日本語学習も親しまれているといいます。

「オーストラリアでこんなに日本の文化が親しまれていることを、もっと日本の人にも知ってほしいと思いました」

日本にいると、日本文化はあまりにも当たり前になってしまう。けれど、外から見ると、その価値は違う姿で立ち上がる。小島さんが気づいたのは、食だけではありません。たとえば、日本にはものを丁寧に包む文化があります。どんな紙で包むのか、どう紐をかけるのか。包み方そのものが、相手への気持ちを表すコミュニケーションになっている。

「日本で暮らしていると、お店で丁寧に包装してくれるのは当たり前に感じます。でもオーストラリアで暮らしてみて、なぜ日本では包装にこだわるのか不思議に思ったんです。調べてみたら、『折形(おりがた)』という室町時代から続く武家の礼法に源があるんだそうです。そんなこと、日本の人もほとんど知りませんよね。外に出てみて初めて自身を知ることもあるんですね」

さらに、着物、茶の湯、仏教、能、書といった日本文化は、それぞれが独立しているのではなく、深いところでつながっている。知れば知るほど、表面的な“和の体験”の奥に、いくつもの意味が見えてくるといいます。

「たとえば着物も、最初は”いかにも日本らしい、非日常的な衣装”という入り口でいいと思うんです。でも、色や柄にはどんな意味があるのか、どういう職人がいるのかなど、一歩踏み込んだ興味を持つと、一枚の着物の奥に豊かな世界が見えてきます」

一度の観光では見えないものがある。けれど、知識を重ねてもう一度訪れると、同じ風景も、同じ体験も、まったく違って見えてくる。小島さんの言葉には、東京を深く味わうためのヒントがありました。

立つ場所が変わると、見え方が変わる

海外で暮らす経験は、日本文化へのまなざしだけでなく、人や社会の見え方も変えたといいます。オーストラリアで暮らす中で、小島さんは自分が“圧倒的なマイノリティ”になる経験をしました。

「私は流暢なバイリンガルではないので、英語では言いたいことの何割かしか言えない。人種的にも少数派で、オーストラリアに親戚もいない。そういう脆弱な立場を体験したことは、大切な学びだったと思います」

日本にいた時の自分は、言葉も文化も多くの人と共有できる多数派として、違和感なく過ごせる場面が多かった。けれど国を移動すると、その立場は一瞬で変わります。

「同じ自分なのに、自国を離れれば言葉も文化も違う少数派になる。場所が変われば自分という存在も、世界の捉え方も、全く違うものになる。そう実感して、ものの見方が広がりました」

その経験によって、日本で働く外国人を見る目も変わったといいます。母語ではない言葉で働き、生活している人たちの努力や心細さを、自分のこととして想像できるようになったからです。

「日本で働いている海外の人を、この人は私だ、という気持ちで見られるようになったんです。言葉の違う異国で暮らす心細さは、私も経験していますから」

小島さんは、日本語にも、人の背景にも、文化の受け取り方にも、ひとつではないグラデーションがあると語ります。正確で流暢な日本語だけが“正しい”のではなく、母語のアクセントが残る日本語も、文法が不完全な日本語も、日本で暮らす人たちの言葉である。そうした幅を受け入れることが、これからの日本社会の豊かさにつながるのではないか、と。

立つ場所が変わると、見え方が変わる。その感覚は、今回のヒルトン東京お台場での滞在体験にも重なっていきます。

東京は、過剰だからこそ面白い

海外の人に東京の魅力を伝えるなら、何を挙げるか。そう尋ねると、小島さんはまず「メガシティであること」と答えました。

「飛行機が着陸する時に見える景色が印象的で、東京は無限に街が広がっているように見える。建物と人が密集して、独特の景観を作り出しています」

ただし、東京の面白さは規模の大きさだけではありません。小島さんが注目したのは、ヒルトン東京お台場からの眺めに、都心のビル群だけでなく、水辺や船、橋、そして土地の記憶が同時に映り込んでいることでした。

「お台場は、江戸時代には守りの要だった場所であり、再開発の記憶もある。今は対岸に摩天楼を見渡し、手前には屋形船が行き来する。目に見えている風景の中に、いくつもの時代や文化がレイヤーになっているんです」

ヒルトン東京お台場から見える景色は、単なる夜景ではありません。東京の過去と現在、都市の熱量と水辺の静けさを、ひとつの視界の中に収める風景です。

東京の中心にいると、その過剰さに巻き込まれてしまうことがあります。けれど、少し距離を置いて眺めると、その密度や光、歴史の重なりが、美しい輪郭を持って見えてくる。そこに、ヒルトン東京お台場という立地の面白さがあります。

“こちら側”から見る東京の新鮮さ

東京に暮らしていると、都内のホテルにわざわざ泊まる機会は意外と少ないものです。小島さんも、ヒルトン東京お台場にはイベントなどで訪れたことはあっても、宿泊するのは新鮮な体験だったといいます。

「こちら側から東京を眺めることって、ほとんどないですからね。スパで夜景を見ながら、“東京は私のもの”みたいな気分になって(笑)。目の前をきれいな明かりをつけた屋形船が通っていくのも良かったです」

プールでゆっくり泳ぎ、ミストサウナで身体を休め、夜景を眺める。都心のすぐそばにいながら、日常とは別の角度から東京を受け取る時間。レストランでは、食事をしながら目の前をモノレール「ゆりかもめ」が通る景色も楽しんだといいます。

「東京に住んでいる人にもおすすめだなと思いました。家からそんなに時間をかけずに、こんな非日常体験ができるんだなと」

お台場から見る東京は、都心で見る東京とは違います。距離があるからこそ、都市の過剰さも、光の美しさも、少し落ち着いて受け止められる。

「東京って、人も多いし疲れるなと思うこともあるんです。でも、こうやってここから眺めてみると、面白い街だなと思います。いい意味で全てが過剰。本当に、そんなところはなかなかない」

東京の過剰さを否定するのではなく、少し距離を置くことで、その過剰さを魅力として味わう。ヒルトン東京お台場での滞在は、そんな視点の切り替えをもたらしてくれます。

都心と少し距離を置くことで、東京は深く味わえる

今回の滞在について、小島さんは「普段、自分が身を置いているど真ん中から、海を越えてこちら側に来て、そこから眺める。とてもいいロケーションにあると思います」と語りました。その風景に仏教的な「彼岸」と「此岸」の感覚も重ねます。

「こちらの世界とあちらの世界(異界)の間に橋がかかっている。過去から現在に続くものもあるし、多様で混沌としたものが隣り合いながら共存している。東京のアイコンの一つでもあるレインボーブリッジを眺めながら、ついそんなことを思ってしまいます」

ヒルトン東京お台場は、東京の中心に飛び込むためだけのホテルではありません。都心と少し距離を置き、東京を輪郭ごと眺め直すための場所でもあります。その距離感が、東京という都市をただ消費するのではなく、少し引いて受け止めるための余白になっているのかもしれません。

すべてを一度で見尽くそうとするのではなく、少し離れて受け取る。知るほどに、東京の景色には新しいレイヤーが見えてくる。此岸から彼岸を眺めるように、あるいは橋のこちら側から都市の光を見つめるように。

その余白があるからこそ、東京という都市はより深く、豊かに味わえるのかもしれません。

 
 
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