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Tokyo Stillness
See Tokyo, differently.

Interview 2026.05.27

東京を少し離れて眺める贅沢
総支配人が語る“滞在が目的になるホテルステイ”の思想

ヒルトン東京お台場 総支配人・中里英樹

新時代を迎えるヒルトン東京お台場。東京湾とレインボーブリッジを一望し、全客室にプライベートバルコニーを備えるこのホテルでは、2026年から2028年にかけて大規模なリニューアルが進行している。都心にいながら海と空の圧倒的な開放感を味わえるこの場所で、いま改めて問われているのは「ホテルとは何か」という本質的な問いだ。

東京駅から約20分。その短い移動は、単なるアクセス時間ではなく、日常のノイズを静かに脱ぎ捨てるための儀式のようでもある。ヒルトン東京お台場 ホテル総支配人・中里英樹氏に、ベイエリアで過ごすホテルステイの価値、そして東京を“外側から見る”ことで見えてくるものについて聞いた。

都心から20分、空気が変わる場所

東京駅から約20分。
だが、このホテルに到着すると、その距離は不思議と長く感じられる。
長いというよりも、都心でまとっていた速度や緊張を、移動のあいだにひとつずつ脱いできたような感覚に近い。
 
客室のプライベートバルコニーに立つと、視界が一気に開ける。
目の前にはレインボーブリッジ、その向こうには東京湾と都市のスカイラインが広がっている。
 
潮の香りを含んだ風が頬をかすめ、朝は海面に柔らかな光が差し、夜には橋の灯りが長い光の筋を水面に落とす。
 
その光の向こうでは、港湾も、物流も、橋を渡る無数の車も、東京という都市を夜のあいだも動かし続けている。

ただ美しいだけではない。
そこには、いまも誰かが働いている都市の気配がある。
 
「このホテルの魅力は、都心からの近さと、到着した瞬間に感じる開放感が共存していることだと思います」
 
そう話すのは、ヒルトン東京お台場 ホテル総支配人の中里英樹氏だ。
 
「視界が一気に開けて、海と空が広がります。東京には多くのホテルがありますが、全室にプライベートバルコニーを備えたホテルは、実はそれほど多くありません」
 
単に外に出られるだけではない。
ここでは、海の向こうに東京の街並みが広がる。
 
「朝の光、昼の海の色、そして夜景。東京湾の景色は時間によって表情が変わります」
 
その変化を客室から眺められることこそが、このホテルの大きな魅力のひとつである。
 
「しかも、その景色の向こうには、東京という都市のさまざまな表情があります。ビジネスの中心地もあれば、文化やエンターテインメントの発信地もある。ここは、その多様な東京を一歩引いた視点から見渡せる場所なのです」

東京を少し離れて眺めるという贅沢

東京という都市は、常に動き続けている。
ビルが立ち並び、人が行き交い、意思決定が重なり、情報が絶えず更新されていく。
渦中にいると、その流れに自分がどのように巻き込まれ、どこへ向かおうとしているのかさえ見えなくなることがある。
 
だが、お台場に立つと、その躍動を少し離れた場所から眺めることができる。

レインボーブリッジの向こうに広がる湾岸の街並み。
ビル群の上には、都心ではなかなか見ることのできない大きな空がある。
 
夕方になると、空の色がゆっくりと変わり始める。
オレンジから紫へ、そして夜へ。
 
やがて都市の光が灯り、東京という街がひとつの「風景」になる。
 
都市を内側からではなく、外側から眺めること。
それは、東京を見直すことでもあり、自分の立ち位置を見直すことでもあるのかもしれない。
 
中里氏は、この場所の特徴を「東京のエネルギーと穏やかさが同時に存在する場所」と表現する。
 
「目の前にはエリアごとにまったく違う魅力や物語がある東京の街並みがある一方で、海と空が大きく広がっています。このバランスがとても面白いのです。都心の喧騒から少し距離を置くことで、空間的にも気持ちの面でも余白が生まれます」
 
その“余白”は、ただ静かであることではない。
呼吸が整い、思考がほどけ、頭の中で絡まっていた優先順位が少しずつ見え始める。
人によっては、ここで初めて新しいアイデアが浮かぶこともあるだろう。
 
「遠くのリゾートまで行かなくても、都心から20分程度で自分を少し解放できる。それはこの場所ならではの価値だと言えます」

旅の目的が“ホテルになる”とき

かつてホテルは、旅の途中にある場所だった。

観光地へ向かう途中、あるいは仕事の合間に立ち寄る拠点。
旅の主役は、いつもホテルの外にあった。
 
しかし近年、旅のかたちは少しずつ変わり始めている。

客室で過ごす時間、窓の向こうに広がる景色、レストランで味わう食事、
そして何もしない静かな時間。そうした体験そのものが、旅の目的になるのだ。
 
ヒルトン東京お台場が目指しているのも、まさにその滞在のあり方である。
 
「大きな方向性としては、“滞在そのものが目的になるホテル”をより明確に打ち出していきたいと考えています」
 
2026年から進行しているリニューアルも、その思想をさらに深めるものになるという。
 
ロビー、客室、レストラン、宴会場など、さまざまな空間が刷新される予定だ。
だが、それは単なる改装ではない。
 
「この場所ならではの価値を最大限に引き出すことがテーマです」
 
ヒルトン東京お台場には、以前から「余白」という考え方がある。
 
「東京の中心に近いのに、少し距離を置いて過ごせる。空間的にも、気持ちの面でも余白を感じられるホテルにしたいという思いです」
 
その意志は、意匠にも表れる。
装飾で圧倒するのではなく、景色と時間に身を委ねたくなる空間にすること。
滞在者の感覚を刺激しすぎず、むしろ本来の感度を取り戻していくような場であること。
 
「景色や時間の流れ、お客様自身の感性を邪魔しない空間にしていきたい。主役はあくまで、この景色と、ここで過ごす時間だと考えています」
 
ここで生まれるべき感情は、驚きよりも、安堵や静かな高揚なのだろう。
“整う”ための場所であるという意志が、リニューアルの奥にある。

夜を整える、バーというもう一つの客室

ヒルトン東京お台場の世界観を語るうえで、夜のバーは欠かせない。
昼のあいだに浴びた情報や感情をそのまま抱えたまま眠るのではなく、一度そこに立ち寄り、景色を眺めながら自分の輪郭を取り戻す。
 
バーは、このホテルにおける“もう一つの客室”なのだ。
 
夜景を見下ろしながらグラスを傾ける時間には、昼の東京とはまったく違うリズムがある。
遠くの光は美しいだけでなく、その下で動き続ける人々の仕事や営みの気配まで想像させる。
 
東京を消費するのではなく、東京という都市の奥行きを感じる時間と言ってもいい。
中里氏もまた、バーで過ごす夜の意味を大切にしている。
 
「客室から景色を眺める時間ももちろん特別ですが、バーで夜景を見ながら過ごす時間にはまた別の価値があります。一日の終わりに、少し自分を整えて、東京という街を静かに見つめ直すことができる。あの時間は、このホテルらしさを象徴するもののひとつだと思っています」
 
観光の高揚でもなく、仕事終わりの惰性でもない。
夜景を前に、自分の思考や感情が少しずつ静まっていく。
バーは、ヒルトン東京お台場が約束する“夜の余白”そのものなのである。
 

東京を旅する、その拠点としてのお台場

お台場は、東京観光の拠点としても興味深い場所だ。
豊洲市場、有明、銀座、浅草といった主要スポットへも、意外なほどスムーズにアクセスできる。
 
都心から少し離れた場所にありながら、東京のさまざまなエリアへ移動しやすいことも、この場所が持つ特徴のひとつである。
 
ただし、このホテルにとって重要なのは、観光スポットを並べることではない。
むしろ、ここで一度自分を整えたあとに、「今日はどの東京に触れるか」を選べることにある。中里氏も、その点を強調する。
 
「王道の観光を目的にしている方にとっては、都心の方が便利に感じられるかもしれません。ただ、その代わりにお台場には、都心にはない景観や空気感があります」
 
豊洲市場や有明エリアには、海外のゲストから関心を集める施設も多い。
 
「『スモールワールズ』や『ガンダムベース東京アネックス』『チームラボプラネッツTOKYO DMM』など、海外のお客様にも興味を持っていただきやすいコンテンツがあります」
 
さらに、3月末からはホテルの眼前で新たなイベントも始まった。
 
「世界最大級の噴水ショー『東京アクアシンフォニー』も、まさにホテルの眼前で行われます」
 
それでも、この章の主役は観光情報ではない。
東京という都市の多面性に触れる前に、どの自分でその街へ向かうのかを決める時間だ。
 
「東京の魅力は、一つのテーマでは語れません。最先端のアートやエンターテインメントもあれば、食、職人文化、歴史、日常の風景もあります。このホテルは、そうした多様な東京へアクセスしやすいだけでなく、“今日はどの東京に触れようか”と考えるための拠点になれると思っています」
 
昼は東京を歩き、夜は海風を感じながら静かに過ごす。

このホテルが提供しているのは、単なる便利な拠点ではなく、東京を選び直すためのベースなのである。

東京を少し違う角度から、この景色を見てほしい

都市の躍動と、海辺の静けさ。
そのふたつが重なり合う場所が、お台場だ。
 
ヒルトン東京お台場は、単なる宿泊施設ではない。
東京という都市を、少し違う角度から見せてくれる場所でもある。
そして、東京を見つめ直すことを通じて、自分自身を見つめ直す場所でもあるのだろう。
 
「都心から少し距離を置いて、自分を解放したり、リフレッシュしたり、新しいエネルギーを得たり。そして、ここで整ったあとに、東京という都市が持つさまざまな魅力や物語へ、それぞれのペースで踏み出していただけたらと思います。ヒルトン東京お台場が、その視点を見つけるためのハブのような存在になれたら嬉しいですね」
 
いま、窓の外に見えている東京を、次はあちら側から眺めてみたいと思うか。
もしそう感じたなら、その場所はもう決まっている。
 
ヒルトン東京お台場は、ただ泊まるためではなく、自分の視点を取り戻すために向かうホテルなのだから。
 



 
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